刻印

2006年5月3日
固い決意のもとに毛布を洗ったり、片付けものをしていると、部屋に突然空間ができていいきもち。。。本棚の中の詩集が目に留まったりする。が昔の本ってどーしてこんなに活字が小さいのだろう。ぱでぃさんが最近書いている黒田三郎詩集も持っていたはずだけど、と思ったが見つからず。
代わりに、ではないが敬愛する写真家・石内都さんの『Mother’s』を手に取る。1916年に生まれ、2000年に亡くなったお母さんの遺品(下着やくしや口紅、入れ歯なんか・・・)を撮った小さな写真集だ。3年前、この1冊を手に入れるのに、3ヶ月かかった。石内さんはエッセイも大作?をお書きになる。巻末に1ページだけお母さんのことを書いておられるのだが、それによると1930年代に自動車免許を取得し、満州に出稼ぎに行き、結婚した「母」は夫が戦争にとられたために帰郷し、7才下の男性とのあいだに子ども(石内都)をもうける。そこへ戦死したはずの夫がひょっこり戻ってきたため、「母」は慰謝料を払って離婚。
写真家・石内都は書いている。
「長い間母とうまくコミュニケーションがとれずに苦しい思いをしていたのが、父の死後ようやく確執がうすらいできたような頃、母はいなくなってしまった。何とも皮肉なことだ。今までそこにいた人がどこにもいない。実体が消えてしまった現実を前にして、自分の無力さと無念さが想像以上の悲しみとなって押し寄せてくる。
今ここにあるのは母が遺していったモノたちだけだ。私は母に「さようなら」を告げるために、しまわれていたモノたちを、ひとつ、ひとつ、光の中に連れ出して、写真に刻印することにした。」(石内都、1947年生まれ)

石内さんの最初の作品集『絶唱、横須賀ストーリー』をあたしは後生大事に持っている。が、それから、ご自分と同い年生まれの団塊の女の人たちの足や手を撮ったり、人のからだの傷跡を撮ったり、してこられた。

人もモノも変わっていく中で、刻印しておきたいことがだれにもあるということ。そういうことをすくいとっていけるような仕事をできたら幸せなことだろう。昼からビールだのワインだの入っているカラダで、うつらうつら考えている。

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