雨がやむ日を

明け方、眠れなくて目を覚ましていたら、音を立てて雨が降っていた。いろんなことを考えているうちに、いつのまにかすっとやんでいた。心もこんなふうだといいのに、と思った。じめじめしていることがキライな性格なのに、なぜこんなになっているのか。かびがはえそうですよ、もう。

それから起き出して、自分がこんなにも性的な存在で、生き物であることから逃れられない、そのことが深くかなしいと思った。
あたしのこんな部分を掘り出してしまったその人を、恨んだり、憎んだりできたらどんなにラクだろうと。。。さすがに夢に出ることは減ってきたが、彼のいる空気にはまだ時折襲われ、悩まされる。現実には5年という年月をへて深く考え、愛したがゆえに「なんてさびしい人なのだろう」という理解したさが(本当の理解はできないのだと思う)先にたって、とてもじゃないけど、酔っ払ってつくような悪態はしらふでは言えないんだ。

20代の一時期、やたらいろんな人からアプローチだの求婚だのされたことがあった。ラッシュアワーみたいだった。それであたしはすっかり落ち込んで、自分は皿に盛られたさしみのように、冷蔵庫に入れないと腐ってじきに腐臭を放つようになってしまうのかしら、と思い、もうすでに賞味期限切れでにおうような気がしてたまらなくなった。おんなであることが、そのようにみられることが耐えがたかった。
ふだんのあたしは子どもの頃から意気揚々として、少年のような少女のようなといわれ、生きることを楽しいと思っているのです。いまだってね。だから、腐っていく性的な存在になってしまうのはほんとうにこわかったのだ。

明け方、思い出したのはその感覚でした。性的に探求されて、して、その限りを尽くされて、からだの感覚をどうすることもできずに記憶している自分。だからといって、東電OLのように、おんなを売って自分を確認したいってわけでもない(でもその感覚はわかる)。
元の木阿弥でいいから、ニュートラルな生き物に戻るには、まだどれほどの時間が必要なのでしょうか。激しい雨がすっとやんだらいい。青空はまだいいから。こころの内側で、雨がやむ日を待っている。